2020/07/17 16:02

「意識の風化」

指先をたどってなぞるように
花々を揺らすものは
影の下に浮かぶものは
大地を震わせるものは
心を揺るがすものは
鼓動を早めているものは

奥に秘めた思いを掬い出す
歪む水面の向こうから
黒い影が波の輪郭を呼び覚ます

わたしと記憶の間に流れる風と空気
風に身を委ねて身体に流れ込む滑らかな空気
体内へ波打つ荒々しい感情

空気を震わせる水滴
水の循環を感じる波音
天から地まで巡る鼓動

音は過去という時間を作ると同時に
時を超え過去を一気に現実にもたらす
実態のない音の中には実態異常に濃い空気や記憶が
厚くのしかかるように存在している

言葉にしない 言葉にならない
厚く層をなした憶いは
白く濁った冬の世を静かに舞う

全てが同化し意識は止むことなく風化し
波寄せては徐々に削るようにして溝を広げてゆく
そこに流れ込む冷たく潤った透明な水
感情は時として闇に埋めるようにして浸透してゆく