2020/07/17 16:01

「影ははじめて漂う」

湿気を含んだ呼気で弛む視界
歯茎から抜ける音が部屋中で充満している
混沌とした感情は色彩を持つことなく
白と黒の間を行き来している
薄いカーテンをめくると
わたしから滲み出たものが
少しくすんだ窓を白く染めていた

入り乱れた意識の中から
一筋ずつ言葉を引き出して
撚りあげていく
あれからの日々
絡まり合いながら伸び続ける
細い日常を 紡いだ心を静かに纏う

抜けた空の白さを愛おしむように宥めるように
靡く心を 紡いだ心を 手のひらに包んで
絶えず押し寄せる憎悪を噛み締めて
無慈悲な反復に上でそのにある今を生きねばならない

無駄な水で溢れかえる地上
君に背負わされたものは君の肉体
彼らが絶え間なく運んでいるものは
暗い無言の泡だつ気色
次第に鎮まる初めて味わう完璧な孤独
言葉が戻るのを待っている